会名由来/部誌・会報掲載記事抜粋

「やぶなべ会に寄せて」

3代 江口祥一 ( 昭和32年11月発行 生物部誌「やぶなべ第3号」より)

 はやいもので「やぶなべ会」が結成されてからもう6年以上も経つ。このような会がいつまでも続くのも珍しい。私たちは溌剌とした希望に燃ゆる君たちと楽しく1日を過ごし、高校時代の楽しかった思い出を胸に蘇らせるとともに慢性な日常生活を打破して何かやらねばならないという意欲に燃えるのである。
 君たちもそうであろうが、私たちの高校時代も楽しかった。特に生物部の中には一風変わった輩ばかりおり、いつも屠殺しては試食会を開き、つまらないことを躍起となって議論したものである。
文化祭になると1週間も学校へとまり、骨格標本作成と名付けて、鳥、兎、猫などを絞首して試食したり、また日食の時は、前夜から張り切ったのはよいが、いざ日食の始まる時は一同眠くて目も開けられなかったなどいつ思い出しても楽しい。今思うと人のやらないような事をやってみようという野望が人並より強かったのであろう。
しかし、私たちと共に生活した人々は生物部内のいろいろの経験から、一生の仕事として生物研究をやろうと心に誓った人も多かった。見渡してみると大部分大学の生物科に入ったり、営林局員や教師をやっている。
 やぶなべ会の結成は、昭和27年頃だったと思うが、私が母校を卒業して後、現在の新しい生物実験室や研究室ができた時(注 校舎新築前)、後輩の人々が私たちを招いて鶏をつぶして色々と語り合ったことがある。
私たちは母校を去り、友と離れ離れになって改めて高校時代の楽しさが思い出され、誰しもこのような機会が今後も続けられることを願った。それ故、この席上で誰だったかはっきり思い出せないが、会を作ろうではないかとの意見が出た時、即座に皆が賛成した。私たちも若かった時代である。
人のやらない事をやってみたいという心が人の付けないような名称を付けようと云うことになって思い出を秘めた、多少野蛮な、しかし野望をいだいている名前として(よく考えると意味がないようであるが)、“やぶなべ”が選ばれたのである。
やぶの中でなべをつつき合う。何と意味の多い言葉だろう。私たちはこの言葉に惚れて、葉書や手紙に盛んに用いたものである。
 時代がずれると共に会の意義や言葉の意味も共に薄れてゆく。
しかし私たち卒業生と母校、私たちと生物部の関係は薄れさせたくない。私はなんらかの絆でこの関係を保ちたいと思う。私たちは1年に一度ではあるけれども、母校の先生や後輩に触れて思いを新たにするのである。
 私たちの時代と比べると君たちの活動は目覚ましい。
私たちは母校を誇ると共に生物部の一員であったことを誇りに思っている。
この雑誌と共に、“やぶなべ”が一層繁栄することを共に願おうではないか。


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